少しパソコンが使えるというだけで、いろいろなことができると思われることがあります。
- ブラインドタッチができる。
- Excelを使える。
- Illustratorを触ったことがある。
- SNSアカウントを持っている。
- YOUTUBEをよく見ている。
こうした理由から、
- 「ホームページも作れるよね」
- 「SNSの運用もできるよね」
- 「メールの設定もわかるよね」
と思われてしまう人は一定数います。
しかしパソコンを使えることと、ホームページ制作やSNS運用ができることは別です。
ましてやWEBマーケティングができることとはまったく違います。
パソコンが使えることと専門知識があることは違う
パソコンはさまざまな仕事に使われる道具です。WordやExcelを使える人が、ホームページ制作や広告運用、SEOまでできるとは限りません。
これは自動車を運転できる人に、整備や販売、レースまで任せるようなものです。同じ道具を使っていても必要となる知識や経験はまったく異なります。
パソコンから株を購入できる人が、株式投資で大きな利益を出せるとは限りません。売買画面を操作できることと、投資先を分析して利益を出すことは別だからです。
WEBマーケティングも同じです。
ホームページを更新できる。SNSに投稿できる。WEB広告の管理画面を操作できる。
これらはWEBマーケティングを行うための一部の作業にすぎません。
重要なのはその作業によって何を達成するのかです。
誰に向けて、何を伝え、どこから人を集め、どのように問い合わせや購入につなげるのか。さらに結果を確認し、次の施策を決めなければなりません。
操作方法を知っているだけでは、ここまで判断することは難しいでしょう。
突然WEB担当者に任命される人は少なくない
社内で比較的パソコンに詳しいという理由から、WEB担当者に任命される人がいます。
本人にマーケティングの経験がなくても、ホームページやSNSに関する仕事をまとめて任されてしまうのです。これは担当者本人の問題というより、WEBマーケティングに必要な専門性が社内で正しく理解されていないことに原因があります。
突然WEB担当者になった人は、インターネットで情報を調べたり、関連書籍を読んだりすることでしょう。
もちろん、それ自体は必要な行動です。
しかし調べた情報を実際の事業に当てはめるには、その情報が自社にも使えるのかを判断するための知識や経験が必要です。
業種、商品、顧客、地域、競合、予算によって、取るべき施策は変わります。別の会社で成功した方法が、自社でも成功するとは限りません。
インターネット上には正しい情報もあれば、前提条件が省かれている情報もあります。数年前には有効だったものの、現在では通用しない方法もあります。
情報を見つけることと、その情報を自社の成果につなげることは別なのです。
AIの回答が自社にとって正しいとは限らない
最近ではわからないことをAIに相談する機会も増えています。
AIは短時間でさまざまな方法を提示してくれるため、施策の案を出したり、考えをまとめたり、見落としている点を探したりするときには役立ちます。
そのためたとえばAIを使って文章を作成しようとした場合、すぐにそれなりの文章ができあがるため、人によってはその文章に高い評価を与えてしまいます。
ところが、何十年もWEB上で文章を書いてきた私からすると、「何となくの文章。芯をついていない文章。」と見えるケースが多いです。
弊社でもAIをよく活用しています。
WEBマーケティングについてAIとやり取りすることもありますが、提案された内容をそのまま採用することはありません。
- 根拠が弱い。
- 前提が間違っている。
- 現場の状況に合っていない。
- ほかの施策との関係が考慮されていない。
このような点があれば、AIの提案に対して異議を申し立てます。
- 「その判断の根拠は何か」
- 「別の可能性は考えているのか」
- 「この条件でも同じ施策が適切なのか」
- 「実際に成果が出ると考える理由は何か」
このように質問を重ねていくと、AIが最初の提案を修正したり適切ではなかったと認めたりすることは珍しくありません。
AIが意図的に間違ったことを言っているわけではありません。
質問に含まれている前提に沿って回答を作るため、質問の前提が間違っていれば回答も適切ではないものになる可能性があります。
また利用者の意見を強く否定せず、同意する方向の回答になることもあります。判断するための情報が不足している場合には、言葉をぼかしたり、複数の可能性を並べたりすることもあります。
こうしたAIの特徴を理解していないと、「AIが言っているから正しい」と受け取ってしまいます。
その結果、十分に検証しないままホームページを作り直したり、広告費を増やしたり、新しい施策にまとまった予算を使ったりする可能性があります。
しかしAIが立派な提案をしたことと、その施策によって成果が出ることは別です。
AIは自社の顧客を直接見ているわけではありません。社内の事情や過去の失敗、担当者の能力、予算の限界、競合の細かな動きまで、すべてを把握しているわけでもありません。
さらにAIが適切な回答を出していたとしても、それを適切だと判断する人が必要です。
知識や経験がなければ、AIの回答が正しいのか、間違っているのか、それとも自社には当てはまらないのかを判断できません。
AIは有益です。だからこそ弊社でも活用しています。
ただし同じAIを使っても、与える情報、質問の仕方、回答への疑問の持ち方、検証する能力によって、最終的に得られる答えは大きく変わります。
AIを使えば誰でも専門的な判断ができるようになるわけではありません。AIを使う人の知識や経験によってAIをどこまで有効に活用できるかが変わるのです。
ホームページやSNSを始めるだけでは売れない
「商品を売るためにホームページを作ろう」、「SNSを始めよう」という提案自体は間違いではありません。
ただしホームページやSNSは作っただけで成果が出るものではありません。開設した後に、誰をどのような方法で集め、何を見せて行動してもらうのかまで考える必要があります。
ホームページやSNSを始めることは、あくまでもスタートです。
- 「そのホームページには、どうやって人を集めるのか」
- 「SNSでは、誰に何を伝えるのか」
- 「集めた人を、どのように問い合わせや購入につなげるのか」
ここまで考えなければ、売上につながる施策にはなりません。
ホームページを作っただけでアクセスが増えるわけではありません。SNSに毎日投稿したからといって見込み客に届くとも限りません。
作ることや投稿することが目的になってしまうと、作業量だけが増え、成果につながらない状態に陥ります。
陥りがちなワナ
SNSでフォロワーをものすごくたくさん集めることは大事です。
そういった手法は世の中にあふれており、これは昔でいうところのツイッター(現エックス)でもありました。フォロワーを増やすツールもたくさんありました。
フォロワーをたくさん集めれば知名度が上がる、物が売れる。そう考える人は昔も今も多いです。
決して間違ってはいないのですが、無理やり集めた数というものはそこまで効果のあるものにはなりません。
たとえば業者を使ってフォロワーを1000人集めた会社があったとしましょう。一方、業者を使わずに自然にフォロワーが1000人集まった会社があったとします。
どちらが価値があり、その後の利益を生む会社なのか。
完全に後者です。
そのため方法にもよりまずが、無理やり集めた「数」というのはあまり意味をなさないのです。
社内WEB担当者の意見が正しいとは限らない
社内でWEB担当者になると、その人の意見が重視されることがあります。
しかしWEB担当者という立場と、判断内容の正しさは別の問題です。
担当経験があったとしても、実際にどこまでの仕事をしてきたのかは人によって違います。また目的や根拠を確認しないまま、その意見を会社の施策として採用することにも注意が必要です。
同じWEB担当者でも経験してきた範囲は違う
弊社が関わった会社でも、「前の会社でWEBマーケティングを担当していた」という人がWEB担当者になったことがあります。
ところが実際に話を進めていくと、対応できないことが多く最終的には多くの仕事を弊社で行うことになりました。
「WEBマーケティングを担当していた」といっても、どこまで関わっていたのかは人によって違います。
- SNSへの投稿だけを行っていたのか。
- ホームページの更新をしていたのか。
- 広告運用やアクセス解析まで行っていたのか。
- 事業全体のWEB戦略を考えていたのか。
同じ「WEBマーケティング担当者」でも、経験してきた仕事の範囲には大きな違いがあります。
過去に担当していたという事実だけで、知識や実力まで判断することは難しいでしょう。
指示には目的と根拠が必要
弊社にも社内WEB担当者から「このように修正してください」と依頼されることがあります。
明確な理由やデータに基づいた依頼であれば問題ありません。
しかし目的を確認していくと、なぜその施策を行うのかが決まっていないことがあります。
たとえば、次のような点を確認します。
- 「なぜ、その修正が必要なのか」
- 「誰に向けた施策なのか」
- 「何を改善するために行うのか」
ところが、最終的に「上司から言われたので」と説明されるケースがあります。
一方で上司に確認すると、「WEBのことはわからないから担当者に任せている」と言われることもあります。
これでは誰も施策の根拠を確認していません。
担当者は上司の指示だから動く。上司は担当者に任せているから確認しない。その結果、目的のはっきりしない施策に会社の予算が使われてしまいます。
問題は担当者個人ではありません。
知識や経験が十分でない人に重要な判断まで任せながら、会社として検証する仕組みを持っていないことに問題があります。
一生懸命取り組んでも成果が出るとは限らない
WEBマーケティングには数多くの競合が存在します。
一生懸命更新したことや、多くの予算を使ったことだけで成果が決まるわけではありません。誰に何を届けるのかを考え、複数の選択肢から可能性の高い施策を選び、結果を見ながら改善していく必要があります。
- 「毎日SNSを更新している」
- 「ホームページに多くのお金をかけた」
- 「広告費をたくさん使った」
これらは努力や投資の量を表しています。しかし、成果を保証するものではありません。
広告費を使えば必ず儲かるのであれば、すべての会社が広告を出すでしょう。
たとえ広告費に1,000万円を使っても、それ以上の利益を安定して得られるのであれば、多くの経営者が迷わず実行するはずです。
実際には広告を出しても売れないことがあります。
- 広告媒体が商品に合っていない。
- 対象とする顧客が間違っている。
- 広告文が響いていない。
- ホームページで商品の魅力を伝えられていない。
- 問い合わせ後の対応に問題がある。
成果が出ない原因はいくつも考えられます。
だからこそ、適切なWEBマーケティングを行える会社を選ぶ必要があるのです。
WEBマーケティングに必要なのは判断と改善
WEBマーケティングの専門家が必要とされるのは、ホームページの操作やSNSへの投稿を代行するためだけではありません。
事業や顧客、競合の状況を確認し、どの施策を優先するのかを判断するためです。さらに実施後の数字を確認し、続けるのか、修正するのか、やめるのかを決める必要があります。
そしてWEBマーケティングには、すべての会社に当てはまる正解がありません。
同じ業種でも、会社の規模や地域、価格、強み、顧客層によって有効な方法は変わります。
SEOが向いている会社もあれば、WEB広告を優先したほうがよい会社もあります。SNSと相性のよい商品もあれば、ほとんど効果を期待できない商品もあります。
重要なのは流行している施策を始めることではありません。
自社にとって可能性の高い方法を選び、結果を数字で確認し改善を続けることです。
社内WEB担当者に必要なのはすべてを知ることではない
社内WEB担当者が、WEBマーケティングのすべてを一人で理解する必要はありません。というよりもかなり難しいです。
むしろ重要なのは、自分だけでは判断できない範囲を把握することです。社内事情を理解する担当者と外部の専門家が役割を分担したほうが、現実的に進めやすい場合もあります。
社内WEB担当者は、会社の商品やサービス、顧客、社内事情を理解しています。
これは外部の人間にはない強みです。
一方、外部の専門家はさまざまな会社の施策に関わり、成功例だけでなく失敗例も見ています。複数の広告媒体やSEO、ホームページ改善などを比較しながら判断できます。
どちらか一方だけで進める必要はありません。
社内担当者が会社の情報を整理し、専門的な判断が必要な部分を外部に相談する。このように役割を分ける方法もあります。
会社の予算を思い付きで使わないために
WEBマーケティングで避けたいのは、目的や根拠が曖昧なまま施策を始めることです。
ホームページ制作やSNS、広告運用には、会社の予算だけでなく社員の時間も使われます。実行する前に目的と判断基準を決め、実施後に結果を検証できる状態にしておく必要があります。
新しい施策を始める前には、少なくとも次の点を確認したほうがよいでしょう。
- 誰に向けた施策なのか
- 何を達成したいのか
- なぜその方法を選ぶのか
- どの数字を見て結果を判断するのか
- 成果が出なかった場合に、いつ見直すのか
これらに答えられない場合、その施策はまだ実行する段階ではない可能性があります。
パソコンが使えることと、WEBマーケティングができることは別です。
社内WEB担当者を置くことが問題なのではありません。専門知識や経験が十分でない人に、会社のWEB戦略に関する判断まで任せきってしまうことが問題なのです。
WEBマーケティングの世界には無数の競合がいます。
一生懸命取り組むことも、予算を使うことも必要です。しかしそれだけでは成果につながりません。
会社の大切な予算を思い付きで使わないためには、施策の目的と根拠を確認し、結果を検証できる人が必要です。
それがWEBマーケティングの専門家が必要とされる理由の一つです。
参考・出典
本記事はWEB制作およびWEBマーケティングの支援現場で経験した事例をもとにした見解です。特定の企業や担当者について述べたものではありません。

